お庭の隅にひっそりと
むらさきかたばみの花咲いた
幼い頃
いつもそばに咲いていた
かわいい可憐なむらさきかたばみ
咲いているとうれしかった
ピンクのかわいい花びら
そばに飾っておきたくても
摘んでしまうとすぐにしぼんでしまう
咲いている花を見守ることが
大切にすることだということも
幼いながらに知った
幼い頃
部屋のサッシを開け放ち
風を感じながら
母のそばですごすことが
何より私はうれしかった
母はずっと仕事でいそがしかったけれど
家ですごすときは
洋裁や編み物をしていた。
母に教えてもらいながら
母のふっくらとした優しい手を見ていた。
母と同じことができることが
なによりうれしかった。
静かに時間が過ぎていく。
庭に咲く花は静かに風に揺れていた。
それはとても幸せな記憶。
ずっと母のそばにいたかった
優しい母がすべてだった
気がつけば
むらさきかたばみ ひっそりと
いつのまにか庭に咲いていた
見守る私
見守られる私
幼い心そのままに
今も静かに咲いている
むらさきかたばみ
幼い日の私
幼い日の母 今のわたしより
ずっとずっと若かったのだなあ
いつも服を作ってくれた母
いまでも覚えているお気に入りだった
夏のワンピース
紺地に大きな白い花が描かれた布
真っ白い丸襟のワンピース
あの頃のわたしにもどりたい
ふと思う