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こんなにお空は秋色で
心に染みる青さでも
萩はお空を見上げない

風はそんな萩を心配して

「ほら見てごらん、
 あんなに秋の空がきれいだよ。
 見ればきっと心も晴れるよ」と

萩のお花を揺さぶるけれど

萩のお花は首振って
やっぱりお空を見上げない。

「私のなかに想い出を
 いっぱいいっぱい抱えているの
 小さい花のひとつひとつが
 私の大切な思い出だから。」


秋の雨は
もうしわけなさそうに

「こんなにあなたを濡らしたら
 ますますお空が見れないね。
 涙をためてうつむいている
 あなたを見てるとつらくなる」

けれど 
萩はそっと微笑んで
そして静かに言いました。

「私はこれでしあわせよ。
 私の中に秋があるの。
 本当は私が秋の中で
 一番一番幸せな花。
 私はそれを知ってるの
 だから私は目立たぬように
 静かにそっと咲きたいの」

萩の花 優しい。
あふれる想いは花の中に。

ささやかな秋の喜びを
そっと教えてくれる花

優しい秋を感じさせてくれる花。