薔薇は優雅に咲いていました。
いつものように
薔薇の季節に。
春と秋
甘い香りをふりまいて
ゆったりと
またこの季節に。
ある日
ふぁんふぁんと風に揺れていた
萩にお花が、突然咲きました。
あわてんぼうの萩の花
薔薇のお花が咲いたので
自分の出番と勘違い
様子が違う空の下
咲いてびっくり おおあわて。
「薔薇さん薔薇さんごめんなさい
私は本当にあわてんぼう
私は秋のお花なのに
こんな季節にどうしましょう」
薔薇の前で
飛んだり跳ねたり大騒ぎ。
薔薇は 黙っておきました。
声をあげて笑いたかったけれど
知らないふりして。
薔薇はいつもより
鮮やかに
華やかに咲いてみせました。
いつもひとりで咲いていた薔薇は
本当はうれしかったのです。
けれど黙っておきました。
薔薇と萩との物語。
夏に向かう季節の中のおはなし。