一年の最後の日ひとことで。

2011年01月08日

兎と神さま

月が腰掛のように細く輝く夜
兎はばたばたと神さまに会いに来ました。

「いそがしい、いそがしい。
 私はどうしてこんなにいそがしい。
 月が満ちるまでに
 神さまのお役目 こんなにたくさん。
 朝から晩まで走ってて
 なんだか本当に目が回る。
 どうしてこんなにいそがしい。」

息を切らし 耳をピンと立てて
神さまの言葉を待つように
やっとそこに座りました。

神さまは 言いました。

「あなたはすべてを背負いたい、
 忙しくしたいだけなのです。
 もうすでに 任務が完了していることまで
 いつまで背負って走ろうとするのですか。」

兎は 頬をプクッとさせて
まんまるな目をさらに丸くして言いました。

「いえいえ神さま。
 私の任務は終わっていないのです。
 まだまだ私はやり足りないのです。
 まだ何も報われていません。
 がんばればがんばるほど仕事は増えて
 私はなんだか目がまわる。
 だけどもっともっと
 私はがんばらないといけないのです。」

神さまは 少し笑って言いました。

「少し楽におなりなさい。
 任務完了したものは
 今夜あなたの記憶から
 そっと消しておきましょう。」

兎は 不満げに座っていましたが

「そうだ!急がなくちゃ。
 私はこうしていられない。
 神さま失礼いたします。
 また行ってまいります!!」

そう言って 失くした記憶にも気づかずに
次の任務へと走って行ってしまいました。

細い月だけが
静かに微笑みながら
兎を追いかける夜でした。
201101031652000


norie1

nori56jp1 at 23:56│Comments(2)まとめ | メルヘン

この記事へのコメント

1. Posted by なつこ   2011年01月25日 10:45
素敵な優しい言葉で包み込むような、そして含蓄のある詩ですね。

兎さんと神様の会話で 人間が生きていける理由が分るような気がしました。

辛い事や、哀しいこと、いつもそればっかりの思い出だけでは 先に進めないですから・・

知らず知らずの内に神様が記憶を消してくれてるのかも知れないですね。

時折 哀しい時には楽しかった想い出を、楽しい時には苦しかった時を振り返って、自分を戒めながら先へ進まなければいけないのですね。
2. Posted by のりえ   2011年01月25日 22:10
なつこさん ありがとうございます!

なんとなく浮かんできた物語を書きとめたものですけれど
こんな風にコメントいただけるなんて
とっても照れますが うれしいですっ!!

がんばっても限界がありますし
一度にあれもこれもできないのですが
どこかで神様のご慈悲によって
「もうそれはいいのですよ」って
言っていただけるような気がしていますし

忘れることで救われることもあるような気がします。

うさぎは たぶん
忙しくしているのが好きなのだと思います(笑)
だけどいそがしく走っているうちに忘れたりします(笑)

こっけいですけれど
それもいいことだ

それもまた神様のご慈悲かも、と
なんだか思えたのです。

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