彼岸花と秋桜
秋の青空のもと
一緒に咲いてる
彼岸花は几帳面。
筋を通して お彼岸に
背筋を伸ばしてきちんと咲いた。
今年もきっちりお約束果たし
誇りをもってしゃんとして。
ところがせっかく咲いたのに
自分のそばでは秋桜が
ふわふわゆらゆら咲いている。
せっかくきちんと咲いたのに
秋のお空も見えづらい。
私だけを見て欲しいから
葉っぱもつけずに
真っ赤にきれいに咲いたのに。
彼岸花はたまらなくなり
秋桜にこう言いました。
「あなたとは私は違いすぎる。
気ままで風まかせなあなたの生き方が
私にはわからない。
自由でふらふら いい加減
それでいて優しげに咲いて
いつもみんなに愛される
あなたのそばで
私は咲きたくはないの。」
そうしたら
コスモスは身体を自分に近づけるようにして
微笑んで言いました。
「私もあなたと同じ秋に咲く花。
私もあなたの仲間です。
そして私もあなたと同じように
悲しみもいっぱい知っています。
だからこそ こうしてあなたと同じ季節に
こうして咲いているのです。
私は風にこの身をあずけながら咲くことしか出来ません。
私はあなたの美しさもよく知っています。
決して私は空ばかり眺めてはいません。
あなたのそばで
あなたが誇り高く咲いている姿もいつも見ています。
だからどうぞ私もいっしょに
あなたのそばで咲かせてくださいな」
彼岸花は何も答えずに
黙っていましたが
本当は胸が熱くなり
ますます赤く咲きました。
対照的な二人だけれど
いつしか二つの花は打ちとけて
静かな丘で空を見上げて語らいました。
秋の空は より青く澄み切って
ふたつの花を包んでいました。
秋風もうれしそうに
いつもより優しく吹きました。
彼岸花と秋桜と。
静かな秋の物語。